虚構新聞的な感性に対するカウンターとしての影村黒絵

空が灰色だから』最終巻を読んだ。いい漫画だった。何がいいのかというと、ちょっと難しい。わかりやすい突き抜けた何かがあるわけではないと思う。
単行本裏表紙にこうある。「コメディか、ホラーか、背徳か、純真か、説明不能の"心がざわつく"思春期コミック」と。最終巻収録のエピソードで、まさに、というものがあった。題名は『さいこうのプレゼント』。
一見コメディであり、実はホラー。ヒロインの影村黒絵は、背徳的であり、ある意味純真であり、高校2年生。公式の説明そのまんまということで、この話を「空灰」の象徴としてよいかもしれない。表紙にもなっているし。
好きな先輩に黒絵がラブレターを渡すシーンがある。赤い色で「ころしていえにかざりたいほどだいすき」。紙には血しぶき。先輩は「ダイイングメッセージかよ!」「内容こわすぎ!」とつっこむ。コメディタッチで描かれているが、ある仕掛けに気付くと、読者は彼女が本気であるとわかる。
ギャグだと思ったら負け。額面通りに読むのが正解。虚構新聞だとか「ネタにマジレス恥ずかしい」だとか、そういう類のシニカルさにどっぷり浸かっているネット民にこそ、これは効くんじゃないか。そんなことを思った。